ピロール農法の素晴らしさをもっと多くの方に知っていただくために、「人」に密着してインタビューするシリーズ。
(今回よりスタッフ高橋(写真右)も取材に同行しました)
今回は福井県美山町という、とても水のきれいな山間部で米作りに、ご自身の事業にと活躍される内田さんにお話を伺いました。
ピロール農法との出会いはいつ頃からだったのでしょうか?
ピロール農法に出会ったのは5−6年ほど前だったと思います。
10年ほど前から地元でコメを作っていたのですが、付加価値をつけたいとずっと考えていました。
無農薬有機栽培は有名ですが、非常に手間がかかるのです。
ピロール農法が、農薬を分解する微生物の作用を利用したものならば、手間と効率を考えても農家の経営が成り立つなと考えました。
はじめは、ピロール農法の研究をしていた坂井博士が美山町の商工会に講演に来られた際に話を聞きに行ったことがきっかけだったと思います。
その後ピロール農法をどうやって始めたら良いのか情報を調べていたら、ピロール肥料を製造している(株)エルゴンの黒田会長に行き当たりました。
ピロール農法は今年で4、5年目になります。他の農家さんと比べたら、そんなに歴は長くないんですよ。始めはやはり挑戦半分で、自分でその真偽を確かめてないと気が済まない性分でして(笑)
実際にピロール農法でお米を作ってみていかがだったのでしょうか。
田んぼ1枚からまず初めてみたのですが、収穫した時のツヤが他と違ったことが印象的でした。当時、いもち病(*風通しが悪い時によく発生する)が流行った年だったのですが、ピロール農法で作っていた稲だけは被害が少なかったのも驚きでした。
また、収穫したお米が時間をたっても劣化、乾燥が少ないなど、いろんな発見がありました。
依頼を受けて無農薬、無化学肥料で作っている田んぼも何枚かあるのですが、ピロール農法米と比べると、元気が少ないような気がします。味は良いのですが。
毎年お米のコンテストに出品もしているんですけど、そこで入選するのはなかなか至難の技だったりします。まだまだ修行中ですね。
お米作りを始めたのはいつからだったのでしょうか。
今年で確か10年目になります。
もともと小学校の頃から、父の手伝いで田植えや稲刈りなどの手伝いをしていました。
高校を卒業後、岐阜の会社に就職して3年。その後福井にもどり、こちらの糸を作る会社を起こしました。
湿気が多いこの地方は、地場産業として古くから繊維産業が盛んだったんです。
(取材時はあいにくの雨だったが、咲き誇るアジサイが美しかった)
考えなくても仕事があったんですね。おかげさまで、今の時代でもなんとか経営できています。
1日のスケジュールを教えてください。
朝6時に起床して、8時ごろまで田んぼの草刈りをしています。
その後朝食をとり職場に。
(5月に私達が手植えした田んぼです。すくすく育っています!)
夕方4時ごろには退社し、再び田んぼへ行って日没か、体力が続くまでか、お腹が空くまで作業をしています。
毎晩10時ぐらいには寝ていますね。寝ないと体がもたないんです。
また、今年は地元の消防大会にも出場予定でそこで若い人たちの指導にあたっています。実は昔大会で優勝したことがあるので、こちらの方が気合が入ってしまい、田んぼの世話まではなかなか手が回らなくてジレンマを感じています。
この仕事の楽しさは?
お客さんから直接喜びの声をいただけることですね。それがないとやってられません笑
ずっとお付き合いのあるお客様の中には、高級デパートでお菓子を買って送っていただけたり、以前東京のお客様の元を訪れた際には伝統のある神社の方だったりで。
普通にスーパーに流通しているお米を買ったら「早く送って!」とか言われるんでしょうが・・・(笑)お互いに顔が見えるやりとりができるというのは作る苦労も報われるというものです。
通常の流通に乗せようとしたら、農薬を撒いて作業効率をあげて・・・とやるのですが、この地方は水がとても綺麗で美味しいので。
美味しさを求めると違ったやり方も考えないといけないのです。
現在は福井の地酒の「常山」用のお米も作っています。ここでピロール米で作った日本酒を作ろうと、酒蔵さんと計画も進めています。
私が田んぼをやる前、、、今から15年前ぐらいでしょうか。この地区の酒好きのおっちゃんが、常山の先代と高校の同級生だったそうで、かれこれ15年ぐらいのお付き合いです。
吟醸、大吟醸のお米はここで作ってるんですよ。
色々とアイディアも湧いてやりたいことはたくさんあるのですが、品質も担保したいので、広めるとしても少しずつやらないと。とは感じています。
日本酒用のお米作りは最初2人で始めたのですが、現在では4名体制にまで増え、チャンスがだんだんと広がって来ていると思います。
このお仕事の苦労や課題は?
若い方、後継者がいないことですね。
とにかく体力的に大変なんです。35箇所もの田んぼを管理しているので、その広さを草刈りしようとすると、一人だと45時間ほどかかるのです!
農業に係わる人、百姓がカッコ良くなければ、だれもこんな苦しい作業はやりたくないと思うんです。
私自身が若い頃は農業なんてやりたくありませんでしたから(笑)。小さい頃から、みんな苦々しい顔をして米作りをしているところを見て来たので、笑いながら関われるように、魅力的に映るお米作りをしたいですね。
草刈りも本当でしたら今すぐにでも田んぼの畦や土手の草を借りたいのですが、地元の役回りもあってなかなか手が回りません・・・
谷:例えばですが、以前田植えのイベントをさせていただいた時のように、体験したい人を集めて草刈りイベントをするという企画は可能なのでしょうか?
(5月に内田さんの田んぼを1枚お借りして田植えイベントをさせていただいたときのワンショット)
私(谷)が農業高校の出身なので、その学校とうまく連携をするとか、都会から来たお客さんに安全に配慮して体験していただくとか。。。
狩払い機を使っての斜面の草刈りですので、怪我のないようにしていただきたいところだけですかね。
実は農家民宿をやっている方もご近所にいらっしゃるんです。
もしそのように作業にお手伝いいただけるのでしたら、そちらに宿泊するなどの協力もできると思います。
そんな風にして、少しずつ関わっていく中でこの地のことを魅力に感じていただけたら嬉しいですね。
以上、お米農家の内田さんのインタビューでした。
「農業がかっこよく見えないと!」「想いを引き継いでくれる方を・・・!」という部分に特に強い想いがある内田さん。ご自身で事業を興されたり、消防の大会で優勝したりと、静かに語りつつも強いエネルギーを感じました。
谷はかねてから、味や品質ももちろんのこと、人が関わりたくなるようなお米作り、ブランディングを創業当初から意識して事業をスタートしてきています。
自分たちが商品を売って終わりにするのではなく、こうして生産現場の生の声にも応えていけるよう、様々な方へのインタビューを通じて、皆様の問題解決にも役立てたら嬉しく思います!